溶湯を鋳型に流し込むための最も簡単なやり方は取鍋による方法で、一人が柄杓で注ぐものから容量数十トンのものまである。装置としての注湯装置はロボット式のものもあり、湯口カップに満たすように鍋の傾き角と、注湯完了(湯切)までの制御を行う。また注湯方法として空気圧によってノズルから鋳型に圧送するものもある。
溶湯は鋳型内に注湯されると空気と混ざりながらキャビティを満たしていくが、混ざった空気は鋳型のガス抜きや、鋳型の通気度を利用して外に追い出される。背圧のために流速が低下したり、冷却が速すぎて途中で凝固したりすると湯回り不良や湯境欠陥を生ずる。また逃げ道を失ってキャビティ内に残った空気の量が多いときには巻き込み欠陥となる。
鋳造品の欠陥の種類と原因の概要を記す。
- 砂落ち 鋳型内部に落ちた砂が鋳物のなかに取り込まれることを言う。生型鋳造欠陥の大半を占めている。注湯する前に色々な原因によって鋳型表面の砂が遊離・脱落して鋳物中にはいるために起こる。鋳型砂のコンパクタビリティが低いことが原因である。そのため砂処理時における水分と粘結剤の配分、回収砂の温度管理や十分な混練など砂の性質を向上させる対策が必要。
- 型落ち 鋳型の強度不足のために溶湯圧力によって型が壊れてできた瘤のことを言う。造型時の鋳型充填密度が十分でないことなどが原因となって、型抜きの時に鋳型の一部が緩んだり、溶湯流れによって破損することが原因である。鋳型の充填密度を上げたり、鋳型砂の強さを増す必要がある。
- 洗われ 溶湯の流れによって砂が削られてできた金属の突出物のことを言う。鋳型表面の砂が溶湯によって流され、肌荒れを生じたり、他の部分に異物混入などが起こる。鋳型の充填密度が低いためことが原因である。
4) 押し込み 鋳型を組み合わせるときに鋳型砂の一部が押出されて、鋳物にくぼみが発生することを言う。模型の見切り面の精度不良や、上下の鋳型合せの時に大きな荷重を掛けたことなどが原因。
- 「すくわれ」と「しぼられ」 「すくわれ」は鋳物の表面に粗く板状に突き出した金属が塊状に発生すること。「しぼられ」は注湯の加熱で鋳型砂が膨張して、その一部が鋳肌面に押出されたために溝状の窪みとなること。いずれも溶湯の熱によって鋳型の砂粒子が急激に加熱され、そために起こるる熱膨張が原因である。耐熱性の強いベントナイトを使い、添加量を増して鋳型強さを上げることが必要。
- さし込み 砂粒間隙に溶湯が入り込んで凝固したものを言う。鋳型砂が粗くて造型時のつき固め不足が原因である。鋳型砂の耐火度が低いと溶湯表面の酸化被膜が化学的に反応して、更に溶湯の侵入を許すことになる。還元性可燃物質を添加したり新砂を添加して砂の新鮮度を上げるなどの対策をとる。
- 焼付き荒肌 凝固時に鋳型の砂が局部的に溶けて低融点化合物が鋳肌に密着するものを言い、化学的現象である。純度の高い砂を用いること、あるいは新砂添加により鋳型砂の新鮮化を図る。
- しみつき 鋳型砂が一部分模型について剥がれたあとに溶湯が入りこみ、鋳物表面が盛り上がり鋳肌が汚くなることを言う。その対策は回収砂を冷却して砂の温度を下げることである。
1)日本鋳造工学会編、鋳造工学便覧、p32、丸善 (H14)
2)大中逸雄、コンピュータ伝熱、凝固解析入門、 p229、259、丸善(昭60) |