はじめに
高品質・高信頼・低価格で日本のものづくりが
国際的に確実に勝てる時代は終わった。
新しいものづくりへのマインドセット変革が必要。
その変革への導火線は超上流設計。
超上流設計にはマルチプロフェッショナル、ものづくり川上川下双方向連成が必須という議論を企業メンバーと行ってきました。
本プロジェクトは、内閣府が進める「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の対象課題の一つである「革新的設計生産技術」の研究開発項目「超上流デライト設計手法の研究開発」に該当する、応用的・実用的研究です。
本プロジェクトは、日本のものづくりの川上川下間に存在する専門分野や特性による組織の分断を解決するフラットな双方向連携のためのマネージメント環境構築の研究開発を行い、仮実証により完成度を上げ実用化に向けた研究開発を行います。
研究開発プロジェクトリーダー
国立研究開発法人 産業技術総合研究所
エレクトロニクス・製造領域製造技術研究部門
総括研究主幹
手塚 明
プロジェクトの背景
日本の製造業では川上・川下
双方向の連携が不充分という問題意識
日本のものづくりは、川上から川下まで多種多様な製造業が存在し、切れ目なく繋がっている強みがある一方、企業間や業界間の双方向連携が決定的に不足しているという弱点があると言われています。
例えば、部品産業は国際的シェアが高く、世界市場をリードしている優良企業や人材が多い反面、国内産業内でその可能性を十分に活かしておらず、川上川下双方の視点を活かした技術開発力向上や圧倒的な競争力を持ったプロジェクトを世に送り出す機会を逸失しています。
その背景には、市場との接点を持たない川上産業が川下産業が持つ消費者理解のようなアセットへアクセス出来ないことや、川下産業の市場に関する理解が間違っている場合、ピントがずれた開発要求が連鎖的に川上に渡ってしまうことなどの理由が挙げられます。
双方向連携のキーは「設計仕様」
部署間を繋ぐ高度な設計部署づくりへ
これまで日本の製造業は、製造による「製造作り込み設計力」とも言える狭義のモノ作りの現場における設計機能(製造プロセス設計、設計作り込みなど)が最重要視されてきました。
今後は、上流側の設計力(設計仕様決定力)が広く求められる一方、それぞれの部署での意識向上は勿論、高い理想としては自らが積極的に、バラバラになっている部署間を繋ぐことができる高度なコミュニケーション力を持った拡張設計チームの組成が求められてきます。
プロジェクトの目的
顧客価値の高い製品・システムを生み出す
構想設計能力を最大限に活かすのための
マネージメント/環境構築
本プロジェクトは、ものづくりの川上側と川下側、顧客と企業、社内の設計部署とデザイン部署間など、チーム双方向の連成を加速して顧客価値の高い製品やシステムの開発を可能にする構想設計能力の飛躍的向上を図るためのマネージメント/環境構築の研究開発を行い、日本の製造業の技術的優位性を市場競争力の優位性に繋げることを目的としています。
研究開発課題
製品・システム開発の質と効率の両立:
多くの部署や人が自然に関われる
超上流設計マネージメント/環境構築の研究
本プロジェクトは、ものづくりの川上側と川下側、顧客と企業、社内の設計部署とデザイン部署間など、チーム双方向の連成を加速して顧客価値の高い製品やシステム開発を可能にする構想設計能力の飛躍的向上を図るためのマネージメント/環境構築の研究開発を行い、日本のものづくりの技術的優位性を市場競争力の優位性に繋げることを目的としています。
開発ロードマップ
組織内外連携を活性化し、
超上流設計効果を向上させるためのマイルストーン
具体的な実施項目は、
①組織内連携のための機能設計マネージメント
(インターナルマーケティング)
設計秘匿情報なしで企業内設計フローを把握し、従来不足であった顧客接点部署等の複数部署の知見反映を促す設計マネージメント手法及びソフトウェア等の設計マネージメントに関わる研究開発
②組織内外連携のためのデライト設計環境
(エクスターナルマーケティング)
ブレインストーミング会議のIT化により、会議の事前準備及び事後処理も含めた効率向上のためのプロセス手法及びソフトウェア化等の設計環境構築の研究開発
③超上流設計効果の数値化研究開発
(俯瞰的効果測定と改善)
わが国初の試みとして、本プロジェクトの協力企業に対して奇数年にアンケートを実施してデザイン・設計の費用対効果の数値化を行う
推進体制
三位一体の化学反応活性化を意識した研究開発体制
なお、これらの研究開発の過程において、輸送機械、総合電機、IT機器、精密機械、重工業、建設機械、建設業、什器、社会インフラ、輸送機械等部品製造等、一業種一社を基本とし、日本を代表する複数業種の製造企業から構成される構想設計コンソーシアムを設立・運営し、研究成果の実証を行い、そこからのフィードバックを研究開発に反映させるべくPDCAのサイクルを実行していく事とします。