熱処理Home熱処理概論

 >> 熱処理概論

 

表面硬化熱処理


 表1は作業別にみた表面硬化熱処理法と主な特徴である。


表1 作業別にみた表面硬化熱処理法と主な特徴

表面硬化法
主 な 特 徴
高周波焼入れ
高周波誘導加熱によって、鋼の表面層のみを焼入れ硬化させる処理である。急速加熱・冷却のため得られる組織は、表面硬化層はマルテンサイトで、微細であり結晶粒も細かく、通常の炉加熱焼入れよりも硬さが高い。
炎焼入れ
焼入れ加熱源に酸素:アセチレンガス、ブタン、プロパン、都市ガス、LPGなど用い、鋼の表面のみを加熱焼入れする方法である。高周波焼入れよりも設備費が廉価で、大型の部品にも適する。
ガス浸炭
大量生産向きの浸炭法であり、炭化水素系のガスを変成し、炉内へ装入する。このガスをキャリヤガスと呼び、変成ガスの製法にも吸熱型変成方式と発熱型変成方式とがある。
真空浸炭
通常の浸炭は、変成炉で変成したCOガスをキャリヤとし、これにプロパンやブタンをエンリッチガスとして添加し、Cp値をコントロールする方式である。これに対し真空減圧下において、キャリヤガスを用いず、メタン、プロパンガスなど直接添加して浸炭を行う方法。浸炭時のみガスを装入するため、粒界酸化が通常のガス浸炭に比べ、極端に少なくすることができる。
滴注式浸炭法
ガス浸炭の一種である。メタノールなどの有機溶剤を直接炉内へ滴下し、浸炭を行う方法である。
液体浸炭
シアン化ソーダを主成分とする塩浴によって浸炭を行う方法である。シアン化ソーダは大気中の酸素と反応してCOとNを発生させる。この両者が同時に侵入拡散するため、浸炭と窒化が同時に行われる。現在においては、シアン酸が猛毒なため、廃液の中和が必要であり、この処理は斜陽傾向にある。
固体浸炭
木炭を主成分とするもので、促進剤に炭酸バリウム等添加して加熱する。表面炭素濃度のコントロールが難しく、現在ではあまり実施されていない。
浸炭窒化
液体浸炭同様にCとNを同時に拡散侵入させる処理である。ガス浸炭窒化法と塩浴浸炭窒化法があり、ガス浸炭窒化法は、浸炭性ガス中に5%程度のNH3ガスを導入する。Nが鋼中に拡散侵入するとA1変態点が600℃位まで低下するので、焼入性が良くなる。
ガス窒化
NH3ガスの分解反応を利用し、窒化処理を行うものであり、処理温度は570℃前後、保持時間は100〜150時間と長い。通常の鋼材ではあまり窒化の効果が小さく、Al、Cr、Moなど窒素と親和力に強い元素が含まれないと、窒化の効果は少ない。
ガス軟窒化
吸熱型変成ガスとNH3の混合ガス用い、CとNを同時に侵入拡散させる方法である。処理温度は570℃前後、処理時間は60〜180minであり、処理鋼材には制約がない。
塩浴軟窒化
タフトライドとも呼ばれている処理であり、シアン酸塩と炭酸塩の混合塩浴中に空気を吹き込む。シアンを用いるため廃液の管理が重要である。なお、鋼種に制約がない。
プラズマ窒化
処理品を陰極に、炉壁を陽極にしてグロー放電下で窒化処理を行う方法である。
浸硫窒化
鋼の表面からNとSを同時に拡散侵入させる方法であり、耐摩耗性向上とともに耐焼付き性も向上する。
浸硫処理
鋼表面にSを拡散侵入させ、耐焼付き性の向上を目的とした処理である。表面層は硬化せずポーラス状になるため、潤滑性に優れている。硫化物の生成法には、コーベット法とスルスル法とがある。
ボロナイジング
鋼表面にボロン化合物を生成させる方法であり、固体法、液体法、ガス法があり、いずれの処理においても1800〜2000HVの硬いFeB、Fe2Bのボロン化合物が得られる。
拡散浸透処理
鋼表面にVCやニオブ炭化物が形成される処理である。Vやニオブが混合された浴中に鋼部品を浸漬すると、浴中のVやニオブが鋼中のCと反応して硬い炭化物を形成する。

Copyright (c) 独立行政法人 産業技術総合研究所(AIST)熱処理データベース閲覧プログラム(管理番号:H19PRO708),
管理者:デジタルものづくり研究センター