刃先角・すくい角・逃げ角
工具は被削物に食い込むことによって切削を行う。例えば図1のような状態で工具が右から左に移動して被削物の中に押し込まれて切削が行われる。この刃物の先端の角度βを刃物角と言い、被削物と工具の間に空間をつくるための角度を逃げ角γという。工具の進行方向の前面には切屑が発生し切屑をすくいとるような役割をしている面があり、これをすくい面、その面の垂直面に対する角度をすくい角αと呼ぶ。すくい面が図のように垂直面に対して右側にある時のすくい角を正、反対側にある場合、すくい角は負であるという。
被削材料の硬度が高いときは刃物角小さすぎるとチッピングや欠損が発生しやすくなるので、刃物角を大きくしたほうがよく、逆に、軟鋼や加工硬化性の被削材質および溶着性の大きな粘い被削材質を切削する場合は、切れ味をよくし、切削性を増すために刃物角を小さくしたほうがよい結果が得られる。
また超硬合金などの高硬度の工具材料のもので鉄鋼材料を高速で切削することが一般に使われるが、このような工具材料は刃先が欠けやすい性質があるので、刃先の欠損を防ぐために刃先にチャンファと呼ばれる面取りを施したり、すくい角を負にする方法が取られる。
切屑はすくい面に沿って流れていくので、すくい角が切屑の厚さと流れ方向を決定づける。 すくい角が大きくなると切屑せん断角が小さくなり、切屑厚みも薄くなる。
その結果、切削力が小さくなって切削温度が低下する、工具摩耗が低減(SCM) (SUS) するという効果が得られる。
しかし、すくい角を大きくしすぎると刃先強度が低下し、高硬度材料の加工時などに刃先が欠けやすくなるという問題が生じる。したがって重切削の時はすくい角を大きくする。それでも足りない場合は負のすくい角をつけることもある。
負のすくい角をもつ工具の場合、すくい面上に材料の一部が付着・滞留し(これをデッドメタルと言う)、これが刃先に代わって切削することがある。
しかしこのデッドメタルは切りくず生成状態や工具の寿命、仕上げ面粗さなどに影響を及ぼす。これの原因についてはまだ明らかでない。
工具が工作物と干渉しないようにつける角度が逃げ角である。 逃げ角は工具と工作物の間の接触を避けるためのものであり、それほど大きくとる必要はない。
一般に逃げ角を大きくすると切刃強度が低下し、機械的衝撃に弱くなる。 しかし、逃げ角の大きい工具は摩耗が進んでも逃げ面摩耗幅が大きくならない、びびり振動が起こりにくくなるというメリットがある。
また、アルミニウム合金などの延性材料の切削では、逃げ角を大きくすると逃げ面付着物が生じにくくなるということもある。
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