コーティング工具
工具として優れた性質を持つ超硬合金あるいはセラミックを母材として、その表面に炭化チタン(TiC)、窒化チタン(TiN)、酸化アルミニウム(Al2O3)などを単層あるいは2−3層に薄くコーティングした工具である。
元来コーティングに使われる材料は耐摩耗性、耐熱性、耐食性に優れた性質を持っているが、この材料を使って単独に工具を成形することが難しい。しかし近年の蒸着技術の発展により、これらの材料を他の材料にコーティングすることにより、コーティング材料と母材両方の優れた性能を引き出して、従来にない優れた切削工具が作られるようになった。蒸着の方法としては化学的処理より行うCVD法と物理的な処理によるPVD法があるが、いずれの方法を用いるかは母材との密着性を加味して決定される。ただPVD法は特殊な母材を必要としないことから最近ではCVD法より多用されているようである。
コーティングの膜厚は5−10μm程度のものが多い。種類の違う物質をコ−ティングすることでそれぞれの物質の特徴を生かによる工具の性質を示したものである。最近ではこれらの物質の他にダイアモンドライクカーボーン(DLC)をコーティングした工具が発表されている。ここでDLCは気相合成法により合成されるダイヤモンドに似た高硬度・電気絶縁性・赤外線透過性などを持つカーボン薄膜である。
表1 コーティング物質の特徴1)
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コーティング法 |
色調 |
硬度 HV |
主な特徴 |
Al2O3 |
PVD、CVD |
透明─灰色 |
2200―2400 |
高温高圧下で安定耐>
すくい面摩耗・耐酸化性に優れる。 |
TiN |
PVD、CVD |
金色 |
2000-2400 |
高硬度かつ化学的に安定
酸化開始温度:約600℃ |
TiC |
PVD、CVD |
銀白色 |
3200-3800 |
高硬度、耐逃げ面摩耗に優れる |
TiCN |
PVD、CVD |
バイオレット−灰色 |
3000-3500 |
TiN,TiCの中間の性質、
N,C量で細く材質制御が可能、
酸化開始温度:約500°C |
(Ti,Al)N |
PVD、CVD |
バイオレット−黒色 |
2300-2500 |
耐熱衝撃性大、耐酸化性大、
酸化開始温度:約800℃ |
1) 精密工学会、精密加工実用便覧、(2000)、p94、日刊工業新聞社
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