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横切れ刃角と前切れ刃角


 切削仕上げ面から遠ざかる側の切れ刃を横切れ刃、切削仕上げを生成する切れ刃またはそれに近い側の切れ刃を前切れ刃という。横切れ刃角は工具の切込み運動をする方向、つまり旋削工具でいえば本体の軸心方向と横切れ刃とが挟む角を言い、前切れ刃角は本体の軸心方向と直角な線と前切れ刃を挟む角である(図1)。しかしJISB 0170−1993工具用語規格ではこれらの角度は定義されていない。

横切れ刃角を大きくした場合、次のような影響がある。
  ・ 送り量が同じ場合、被削物との接触長さが長くなるので切りくずの厚みが薄くなる。
  ・ 切削力が長い切れ刃に分散されるので工具寿命が長くなる。
  ・ 切りくず幅は大きくなるので破断されにくくなり、切りくず処理がしにくくなる。
  ・ 背分力が大きくなるので細くて長いものの切削では、被削材が曲がることがある。
 従って、硬くて発熱量の多い切削を行うときや、粗削りで被削材の径が大きい場合、また機械に剛性があるときに大きい横切れ刃角が適している。

 前切れ刃角は工具と切削面が摩耗するのを防ぐために通常は5−15°程度にするが、この角が小さい場合は次のような影響がある。
  ・ 刃先強度は大きくなるが、刃先に熱が発生しやすい。
  ・ 切削抵抗の背分力が大きくなり、切削中にびびり振動が発生する。


図1 前切れ刃角と横切れ刃角1)

1) 稲田重男、寺田利邦、中沢弘、大学課程 機械工作、p65 (1995)、オーム社



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