ま と め
ジルコニア(ZrO2)

1.実験の目的

焼結ダイヤモンド工具および焼結CBN工具を用いて、ジルコニア(Zr02)を切削したときの、被削性について3種類のファインセラミックス、アルミナ(Al2O3:事例68)、窒化けい素(Si3N4:事例69-70)、炭化けい素(SiC:事例71-72)と比較検討する。

2.被削材

 ファインセラミックスはその優れた特性により、機械部品としての利用も注目されており、その加工法としてはダイヤモンド砥石による研削加工が主流であるが、加工能率等で問題点が多い。そこで、高能率が期待でき、また加工形状で自由度の多い焼結ダイヤモンド工具による切削加工が嘱望されているが、まだ実用化にはいたっていない。
  1に使用したジルコニア諸特性を示す。 

3.工具材

1に使用した焼結ダイヤモンド工具および焼結CBN工具の成分と機械的性質を示す。

4.実験結果と考察

(1)工具損傷状態

1に、切削した時の、焼結ダイヤモンド工具の損傷状態を示す。
  ジルコニアZr02の切削における焼結ダイヤモンド工具の損傷は、高温状態での熱によるものと考えられる(図1)。 

(2)工具摩耗

2に焼結ダイヤモンドで切削した時の、工具の逃げ面摩耗の経過を示す。
  ジルコニアは焼結ダイヤモンド工具を用いて、湿式、切削速度25m/minで30min程度の切削が可能である。 

(3)切削仕上げ面

3にジルコニアの切削仕上げ面の写真、及び図4に仕上げ面の断面曲線を示す。ジルコニアの切削仕上面はツールマークが顕著で、金属の仕上面によく似ており、切削時の塑性変形が考えられる。

(4)切りくず

    採取せず。切削油剤のタンクに、沈澱漕とペーパーフィルターを特別に設置して、
 切りくず(微粉末状)の再循環を防いだ。


(5)切削抵抗

6に、切削時の切削抵抗を示す。セラミックス切削時の切削抵抗の特徴は、主分力よりも背分力の方がはるかに大きいことである。このことは、図5に示す実質切込み量からも理解される。したがってセラミックスの加工に使用する工作機械には、特に高剛性が要求される。

5.結論(事例68-73のまとめ)

(1)セラミックスは、その種類によって被削性に大きな差があり、焼結ダイヤモンド工具を用いたとき、アルミナとジルコニアは一応切削可能であるが、窒化けい素と炭化けい素は切削が極めて困難である。また、焼結CBN工具でのセラミックスの切削は困難である。

(2)アルミナとジルコニアを比較した場合、その切削機構から考えて、ジルコニアの方がアルミナよりも切削加工に有利であると考えられる。

(3)セラミックスの切削では、主分力は比較的小さく、送分力と、特に背分力が著しく大きい。