エンドミル形状
エンドミルは図1に示すように、外周部と端面部に切れ刃を持つシャンク付フライス工具を言い、その種類は非常に多い。切れ刃は複数個あり、一般にねじれ角βでねじれた切刃を持つが、ねじれ角のない直ぐ刃のものもある。用途としては平面加工、側面加工、溝加工、ならい加工などに用いられる。
エンドミルの性能を左右するものには刃数、ねじれ角、刃長などがある。
1) 刃数 刃数の少ないものは刃の間の隙間(チップポケット)が大きいので、切りくずの排出は良い。しかし工具断面積が小さいので剛性は低下し、切削時にたわみがでやすい。
・ 深溝切削の場合 : 深さが外周部直径以上のものを切削するときはチップポケットが小さいと切りくず詰まりが起こって切削トルクが大きくなる。また切削油の回りも悪くなり、冷却効果と潤滑効果が得にくくなって外周刃に異常摩耗を起こす原因ともなる。
・ 浅溝切削 : 深さが外周部直径の半分以下のものを削るときは、びびり振動を起こす心配がないので刃数が多い方が一枚の刃にかかる負担が少なくなる。したがってテーブル送りを大きくして切削効率を上げることができる。
・ 側面切削 : 切りくずつまりの心配がないので工具剛性を重視した切削が可能。したがって刃数を大きくとったほうが切削抵抗の変動が少なく良い仕上げ面が得られる。
2) ねじれ角 ねじれ方向には右ねじれと左ねじれがあるが、右ねじれの方が多い。また切削力は工具に対しては、円周方向の力と、軸方向の力に分解できる。円周方向の力は送りに必要な力として作用するので、ねじれ角が大きいほどその分力は少なくなる。そのため切込み分量を大きくとり送り速度を上げることができる。しかし軸方向分力が大きくなるので、薄肉加工の場合は工作物を上方に持ち上げる力が働きびびり振動の原因ともなる。また大きいねじれ角の溝エンドミルでは刃先のコーナが鋭利になるのでコーナがチッピングを起こしたり、欠損したりする欠点がある。一般にキー溝加工のように精度の厳しい溝加工ではねじれ角を小さくする(β=0°−20°)ほうが良い。また側面仕上げの精度が要求される場合はβ>45°にした方が良い。
3) 刃長 エンドミルの刃長と剛性の間には刃長の3乗に反比例して剛性は低下するといわれている。また剛性の低下は被削面の粗さも低下するので、実際の加工の時は工作物に合ったできるだけ短い刃長のものを選ぶ必要がある。
図1 エンドミル
表1 ねじれ角の特性1) ○:優、△:良、×:可
ねじれ角区分
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切削抵抗
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加工面精度
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寿命
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細研磨
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切削トルク
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曲げ抵抗
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垂直分力
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あらさ
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うねり
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軸線の傾き
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逃げ面摩耗
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外径摩耗量
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折損
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逃げ面研磨
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底刃研削
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低
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△
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△
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○
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×
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○
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○
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△
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×
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△
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○
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○
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標準
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○
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○
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△
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△
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△
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△
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○
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△
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○
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○
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○
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高
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○
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○
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×
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○
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×
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△
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△
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○
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△
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△
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△
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1) (財)機械振興協会技術研究所 資料 (92-0257)、(1994)
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