電解研磨推奨条件

以下のような電解研磨の実験に基づく推奨条件が得られました。


推 奨 条 件

1.被削材

加工対象加工目標前加工熱処理
円筒内面, ステンレス鋼

切削


2.加工条件

◆ 加工条件 ◆


・加工レベル:中

電解条件
電極材料名ステンレス
電極形状2mm diameter
電極その他
印加電圧
電流
電流密度0.7A/cm2
加工間隙
電解溶液材料NaNO3
電解溶液濃度20wt%
液流量
液温度
pH
加工時間120s
砥粒研磨条件
回転数23rps
上下動振幅8mm
上下動周期7Hz
砥粒材質
砥粒径
砥粒量
研磨材ナイロン不織布
粒度番号3000
研磨材径


・加工レベル:仕上げ

電解条件
電極材料名ステンレス
電極形状2mm diameter
電極その他
印加電圧
電流
電流密度0.3A/cm2
加工間隙
電解溶液材料NaNO3
電解溶液濃度20wt%
液流量
液温度
pH
加工時間90s
砥粒研磨条件
回転数23rps
上下動振幅8mm
上下動周期7Hz
砥粒材質
砥粒径
砥粒量
研磨材ナイロン不織布
粒度番号3000
研磨材径

◆ 装置図 ◆



工 具


装 置



分析テーマ「ステンレス材による切削管の鏡面仕上げ」

加工に関わる実験グラフと解説

電流密度0.3A/cm2における表面粗さ改善特性
図は電流密度0.3A/cm2における加工時間2分間の表面粗さ改善特性を示す。切削管の方が下地面粗さは大きいが、約30秒で同程度になり2分後の表面粗さは引き抜き管の約半分の値にまで低減されている。なお、粗さ測定の基準長さは0.25mmである。
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図1.電流密度0.3A/cm2における表面粗さ改善特性


仕上げ面粗さに及ぼす電流密度の影響
図は加工時間2分での仕上げ面粗さに及ぼす電流密度の影響を示す。引き抜き管の場合には0.3A/cm2以上の電流密度において表面粗さRmaxが急増大するのに対し、切削管での値は0.7A/cm2程度であり、より高い電流密度での加工が可能になる。なお、粗さ測定の基準長さは0.25mmである。
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図2.仕上げ面粗さに及ぼす電流密度の影響


加工量の時間変化
図は図1の場合における加工量の時間変化を示す。加工量は、加工前後の質量をメトラー電子天秤(最小読取量0.1mg)を用いて測定し、その質量差と工作物管の内表面積に基づいて計算した値である。切削管、引き抜き管とも直線的に加工深さが増大しているが、切削管の方が2倍かそれ以上の値になっている。
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図3.加工量の時間変化


加工速度に及ぼす電流密度の影響
図は図2の場合における加工速度に及ぼす電流密度の影響を示す。切削管の場合には電流密度とともにほぼ直線的に加工速度が増大する傾向にある。一方、引き抜き管の場合には0.3A/cm2以上の電流密度において加工速度が急増大するが、それ以下の低電流密度では電解溶出の加工速度増大への寄与はごく僅かである。
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図4.加工速度に及ぼす電流密度の影響



結論
以上の実験結果により明らかにされた切削管と引き抜きBA管における電解砥粒研磨特性の差違は、主としてBA管のBA処理に起因すると考えられる。すなわちこの処理においては、高温の水素あるいは窒素雰囲気中に長時間さらされた表面からこれらの気体が侵入して硬化層を形成する。電解なし条件における切削管と引き抜き管の加工速度の差は硬化層の硬さの影響を示すものと考えられ、0.3A/cm2以下の低電流密度条件における加工速度の差は、切削面では素地金属が露出しているのに対しBA管では硬化層の存在により#3000の砥粒が素地金属にまで切り込めないことから、イオン化による電解溶出量があまり大きくないためと推測される。またピット発生により仕上げ面粗さが急増大する電流密度のしきい値の差異は、切削面における素地金属とBA管における硬化層の電気化学的特性の違いに起因すると考えられる。



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