円筒絞りに必要なパンチ力を求める。それにはいくつかの仮定が必要であるが、素板の降伏応力をσYとしたとき、素板の外周部に働く円周方向応力σθと、半径方向応力σrは式(1)で与えられる。
(1)
いま素板の外周部がしわ押さえ板の抑え力FHによる摩擦力で留められているとすると、摩擦係数をμとしたとき、摩擦力による素板に発生する応力は次式(2)で与えられる。
(2)
ここで r0 : 素板外周半径、 t0 :
素板の板厚
また素板の直径rの位置での応力σr、σθは次式で与えられる。
(3)
(4)
素板はダイの肩に於いて曲げ変形を受け、素板の流れ方向(子午線方向)に応力が発生する。そしてその大きさは板の厚さ方向に変化する(図1)。この応力の平均値をσφとすると、この子午線方向応力はダイへの入り口(
図1のA点 )から出口( 図1のB点 )に向かって変化する。そして半径r2の位置すなわちダイ肩部B点での子午線応力をσφ2とすると、この応力は素板がダイの肩に巻付いていたために発生する摩擦力の影響を受け、ダイの肩から離れる瞬間に曲げ戻し変形を受ける。これらの影響を考慮して絞り応力σ’φ2は次式(5)で与えられる。ここでrdはダイの肩部分の半径である。
(5)
したがってパンチ力Pはr = r2 における容器側壁の断面積と絞り応力σ’φ2の積として次式(6)で求まる。
(6)
図1 ダイ肩部の応力1)
1) 中村和彦、桑原利彦 プレス絞り加工 p13、日刊工業新聞社 |