板材のプレス成形は図1のように4個の基本的な変形形態に
分類され(林豊)1)、複雑な成形であってもこれらが複合された形
で行われるとした。広義では絞り加工とはこれらの成型法全体を総称する。
1) 深絞り成形
フランジ部分に於いて伸び方向と直交する方向に縮みが発生する変形で、 その変形は板材がダイ穴に流入する直前に発生する。その変形形態はフラ
ンジ部に於いてダイの縁方向に縮み変形を受けると共に、穴に流入する方 向に伸び変形をする。したがって縮み変形成分が多いとフランジの板厚は
増加し、伸び変形成分が多いと板厚は薄くなる。この変形形態ではフランジ部に縮み成分があることから縮みフランジ変形とも呼ばれている。
2) 張出し成形
変形部分に於いて直交する2軸方向に引張り応力
を受けるのが特徴である。この変形方式ではフランジ部分での変形量が
少ないので変形部分での体積を一定に保ったまま2軸方向に伸びる。そ
の結果か表面積が大きくなり、変形部分の板厚が小さくなる。つまり伸
びやすい材料( 延性の大きい材料 )がこの成形に向いている。
3) 伸びフランジ成形
深絞り変形とは逆に材料の流入方向と直交する
方向に伸びが発生する変形である。このような変形は穴の明いた円形
素板にパンチを押し込んで穴径を拡大成形する状況が該当する。ここ
では穴の円周方向に伸びが発生する。
4) 曲げ成形
材料を曲げて成形する変形形態である。ここで
は曲げの外周は伸び、内周は縮む。このような変形では延性のない材
料は外周部でクラックが発生する。
絞り加工法の主なものとしては次の3種類がある。
1) しわ押さえなし絞り成形
しわ押さえ板なしで円錐形のダイを用いる方法
で最も簡単な絞り機の構造をしている。
2) 再絞り成形
一度絞ったカップを再度絞ることによって、よ
り深い成形を実現する方法で、円筒状の形状以外のし絞りは難しい。
3) 逆再絞り成形
一度絞った成型品の上端部を外側へ裏返しに成
形する方法。
図1
プレス成形の分類と材料変形の特徴
1) 中村和彦・桑原利彦、プレス絞り加工、(2002)、p1、日刊工業新聞社
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