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上向き切削・下向き切削
 フライス切削のような断続切削では、カッターの回転方向と送りの方向によって上向き切削と下向き切削の2方式があり、この違いによって切削量や仕上げ面の状態が変わってくる。図1(a)および同図(b)は平フライス切削の場合の例でその両者の違いを示す。
  図1(a)ではカッターが掬い上げるような形で被削物を削り進んでいく方式である。これを上向き切削という。ここでは切刃が削り始める位置でのカッターの円周速度の方向と送りの方向が逆向である。そのため切刃の切削作業の進行と共に削り厚さは大きくなる。これに対して図1(b)の方式では噛み込みながら削り進んでいく方式で、これを下向き切削という。ここでは図1(a)とカッターの回転方向が同じでも送りの方向が反転している。
  同様の考え方で正面フライス切削の場合(図2)を考えると、カッターの回転方向と送りの方向は変わらなくてもカッターの回転中心を挟んでいずれの側が切削に関わるかによって上向き切削と下向き切削が決まってくる。すなわち図2(a)では削り終りに向かって切屑の厚さが大きくなるので上向き切削、図2(b)では噛み込みながら削り進んでいくのでこの場合は下向き切削である。これに対して、カッターの回転中心を含んだ面で切削していく場合は切刃が切削作業をする前面での切削の状態は上向き切削と下向き切削が共存することになる。


図1平フライス切削1)          図2 正面フライス切削1)

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表1 上向き切削と下向き切削の比較2
比較項目 上向き切削 下向き切削
工具寿命 ・刃先のこすりにより.逃げ面摩耗が早い
・食付き時の衝撃が小さいため,欠けにくい
・逃げ面摩耗の点で長寿命.
・食付き時の衝撃により,突発的な欠けが発生しやすい.
加工物への影響 ・バリが出やすい.
・ 刃先のこすりにより加工硬化が生じやすい.
・バリが出にくい.
工作機械 ・ 剛性の低い機械でも可. ・バックラッシュのない高剛性な機械が必要.
切りくず ・長く伸びやすく,工具にからまりやすい. ・短く切れる.



1) 稲田重男、寺田利邦、中沢弘、大学課程 機械工作、(1995)、p117、オーム社
2) 精密工学会、精密加工実用便覧、(2000)、p113、日刊工業新聞社

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