理論的加工面粗さ
理論的には切削仕上げ面は工具の刃先の形状が転写される。例えば前切り刃角κ、コーナ半径R(mm)のバイトをS
(mm/rev)の送り量で切削した場合に旋削される面の表面粗さの最大値Ry(μm)は送り量とコーナ半径が次式(1)の関係を満たすとき、式(2)で与えられる。
(1)
(2)
ここで式(1)を満足する関係はコーナ半径部分だけで仕上げ面が創成される場合であり、大抵はこのような条件で仕上げられるので、式(2)の関係は理論的仕上げ面を表現する式と見なせる。
しかし実際には工作機械独自の特性や、切削作業過程での非定常な原因で理論式通りには表面は仕上がらない。その原因としては次のような現象による影響が考えられる。
- 構成刃先または切れ刃への凝着物の影響: 切削条件( 送り量、切削速度)、被削材の種類、被削材の熱処理や前加工の条件、工具材の種類、工具の刃部の形状、工具摩耗、切削油材、加工雰囲気などとの関係がある。
- 工具摩耗による影響: 刃部の摩耗やチッピングなどにより、工具の輪郭が崩れたために起こるもので、理論通りのコーナ半径が維持できなくなったことによるものである。前切れ刃で外気との境界面で発達する境界摩耗が主たる原因と考えられる。
- 切削面の盛り上がりと掘り起こしによる影響: 仕上げ面断面の山の部分が塑性変型により盛り上がったり、あるいは本来切削されるべき面よりも深く掘り起こされて粗さが大きくなる場合である。被削材の種類、被削材の熱処理、前加工状態、刃部の形状、切削条件などに影響される。
図1 理論的仕上げ面粗さ1)
図2 盛り上がりによる仕上げ面の劣化1)
1) 竹山秀彦、大学講義 切削加工、p108、(平成7)、丸善
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