工作機械剛性・工具とたわみと加工精度
工作物の加工精度は工具と工作物の間の位置関係が正確に確保されることによって実現されるが機械が動くことによって、相対的な位置関係は絶えず変動させられている。切削点回りの環境とそれらが加工精度におよぼす影響の要因を表1に示した。
中でも工作機械本体は機械固有の特性により様々な現象を切削点におよぼすので、切削時に注意しても避けることができない部分がある。主軸の回転精度や位置決め精度などの影響は一種の機械の癖として対応せざるを得ない。
切削作業そのものは大きな力と熱の発生を伴うので、これらの力や熱が工作機械や切削工具に変形や熱膨張などを起こすばかりでなく、工作物そのものをも変形させて、所期の位置に切削点を固定することができなくなる。また切削点が移動することにより、各部の力の配分が変化し、あちこちで変形を引き起こして、加工精度を下げる原因にもなる。
したがってこれらの影響をできるだけ避けるためには、例えば次のような方策が考えられる1)。
・ 工作機械や工具の剛性を高める。
・ 触れ止め、専用固定具などで工作物の等価剛性を補強する。
・ 工作物の両側から工作する。(これを平面切削法と言う)
・ 構成刃先の発生やびびり振動が発生しないような切削条件を選ぶ
・ すくい角を大きくし、潤滑性のよい切削油を使う。
・ 送りを小さくする。切込みを分割する。
・ 推定変形量だけ控除した切込みを与える。
・ 切削油剤などで工具や、工作物を冷却する。
・ 冷却装置などで工作機械の発熱部分を冷却する。
・ 工作機械を十分ならし運転を行う。
・ 工具摩耗の少ない工具と切削条件を選定する。
表1 加工精度におよぼす要因1)
発生個所 |
要因 |
発生個所 |
要因 |
工作機械 |
主軸回転精度 |
工作物 |
取付け力による変形 |
位置決め精度 |
切削力による変形 |
切削抵抗による変形 |
重力による変形 |
重量移動による変形 |
熱変形 |
切削工具 |
切削抵抗による変形 |
残留応力(前加工を含む) |
工具損傷による刃先の後退 |
切削現象 |
刃先付着物による過切込み |
熱変形 |
粗さ、うねり |
ジグ・取付け具 |
切削抵抗/固定力による変形 |
びびり振動 |
取付け/再取付け精度 |
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1) 日本機械学会編、機械工学便覧B-2-123、日本機械学会
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