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切削油

 切削油には、大別すると二つの種類がある。 すなわち潤滑作用を主目的とし、原液で使用する「不水溶性切削油」と、冷却作用を主目的とし、水に希釈して使用する「水溶性切削油」である。この切削油には大きく分けて潤滑作用、冷却作用、溶着防護作用があると考えられる。しかしそれぞれの作用ごとに一つの切削油を使うのではなく、実際には一つの油剤でこれらの作用を同時に行うことが期待されている。そのため油には様々な添加剤を混ぜることによって、複雑な現象に対応した切削油剤が開発されている。しかし近年の環境問題が重視される中で添加物に塩素系のものは除外されるようになった。

1) 潤滑作用
 工具が受ける摩擦力は図1に示すようにすくい面上での切りくずとの間、逃げ面と被削材の間の2個所である。それらの摩擦によりすくい面ではクレータ摩耗(すくい面摩耗)、逃げ面上ではフランク摩耗(逃げ面摩耗)が発生する。ここに潤滑油を供給する場合、逃げ面は工具の進行方向に油が入っていくので入りやすいが、すくい面上に於いては切りくずの排出方向と逆向きに工具が進んでいくので油の供給はされにくく、切削直後の切りくずは活性に富でいるので、切削への潤滑油の供給要な課題となる。しかし低速、軽切削の場合のように効果的に潤滑油が供給される場合、潤滑作用の効果は大きく、摩耗の軽減ばかりでなく、仕上げ面の向上、切削動力の軽減に効果的である。
2) 冷却作用
 切削作業による仕事はほとんどが熱に変換される。そのため切削点付近の工作物は膨張して加工精度を下げる原因にもなっている。そこで被削材−工具、工具−切屑で発生する摩擦熱や金属のせん断熱を吸収し、被削材を冷却することは加工精度の向上から見ても効果がある。また切削点の温度を下げることは工具の軟化を防ぎ、被削物と工具の間の拡散や、合金化を押える効果があるので工具寿命を伸ばすことにも効果がある。しかしフライス切削のように断続切削が行われる場合、ここに熱伝導の悪い工具を使っていると、冷却効果がありすぎると繰り返し熱応力が発生して、工具寿命を短くする危険性もある。
3) 溶着防護作用
 被削物と工具との間に介在することによって工具と被削物および、工具と切くず間の溶着を防いで構成刃先の発生を妨げる。このことにより構成刃先に起因する仕上げ面粗さの悪化や、加工物の寸法精度のバラツキを防ぐ。


図1 切削点での切削油の供給





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