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マグネシウム切削の火災防止対策は?
マグネシウムの切削加工で火災が発生したという話をよく聞く。どんなときに火災が起こるのか、どのような対策を取ればよいのか、などに関して問い合わせが多い。
マグネシウムの火災は、どのような場合に発生するのか?
マグネシウムの素材や製品そのものがいきなり発火することはない。切削中に薄い切り屑が発生すると、その切り屑が発火して、周囲の切り屑や機械油などに引火して、火災につながり易いという捉え方が正しい。
薄い切り屑や微細な切り屑はどんなときに発生するのか?
送り量を小さくし過ぎたり、切込み量を小さくし過ぎたりすると、薄い切り屑や微細な切り屑が発生する。しかし、マグネシウムは切削抵抗がアルミニウムの2分1程度と小さく、通常では、発火するほど薄い切り屑を生成させなければならない切削はほとんどない。
切削終了時に回転したままで送りを停止させるドウエル時や、位置決めや切込み設定のため、マシニング加工では回転する正面フライスやエンドミルの刃先を素材に軽く当てる、旋削加工では回転する素材にバイト刃先を軽く当てるといったような時に、発火しやすい薄い切り屑や微細な切り屑が生じやすい。
ドウエル時間をできるだけ少なくし、また、素材に切れ刃を当てるときは薄い切り屑や微細な切り屑を発生させないように心掛ける。
発火した切り屑から火災が起こらないようにするにはどうすればよいか?
1、発火現象そのものを防止することが大前提である。即ち、薄い切り屑や微細な切り屑を出さないように注意すること。
2、工作機械のテーブルや刃物台に排出された切り屑は素早く取り去って、テーブルや刃物台、その他を常に清掃した状態に保つこと。切り屑が堆積した状態になっている場合、その上に発火した切り屑が落下すると、切り屑に引火する危険性が大きくなる。大量の切り屑が燃焼すると消火が困難になる。
除去後の切り屑は機械回りに置かないで延焼の心配のない場所に置くこと。蓋のある乾燥した金属缶などの容器を機械から離れた位置において、生成された切り屑をこまめに容器に移して蓋をするというのも一つの方法。
切り屑が燃え上がったら消し止める方法は?
慌てて水をかけることは絶対に避ける。発火したマグネシウムは、水を分解して水素ガスを発生させるので燃焼を一層促進させる。
以前は、マグネシウム火災に備えて、乾燥した砂、黒鉛粉末、鋳物の粉末状切り屑などを用意しておいた。発火や引火があったときは、広範囲に燃え広がる前に、速やかに散布して消火するためである。最近では、マグネシウムに対して不活性な切削油剤の研究が行なわれている。以前の手法もよいが、切削油剤メーカーに最新情報を提供してもらうことも必要。
マグネシウムの切削に関するその他の注意事項は?
一般切削用の水溶性の切削油剤は適用しない。マグネシウムは水を分解して水素ガスを発生させやすいことは上述の通り。
マグネシウムの切削加工が多い場合には、工作機械を特定し、マグネシウム加工専用に充てること。この場合には、工作機械を清潔に乾燥した状態に保つこと。また、切削油剤を使用する他材の切削と同一の工作機械を使用する場合には、工作機械をよく拭き取って、切り屑が湿気を帯びない様に注意すること。
切り屑の保管にも注意が必要。切り屑を他の材質のものと混合しないこと。容器に入れて保管する場合でも、雨水が入ったり湿気を帯びないようにすること。可能であれば切り屑をビレッド状に固形化するのがよい。